産業廃棄物の委託契約書必ず書く法定記載事項
産業廃棄物の処理を初めて外部に委託するとき、契約書に何を書けば法律上の要件を満たすのか、担当者が迷う場面です。廃棄物処理法は、収集運搬と処分それぞれの業者と書面で契約すること、その書面に法令が列挙する事項をすべて含めることを排出事業者に求めています。法律・施行令・施行規則の条文(e-Gov法令検索)と環境省のチェックリストをもとに、記載事項の一覧、契約前に許可証で見る項目、書面がない場合の罰則、保存期間を整理しました。読み終えるころには、手元の契約書案を条文と突き合わせて抜けを見つけられるようになります。
産業廃棄物の委託契約書に必ず書く事項の一覧
産業廃棄物の運搬または処分を他人に委託するとき、排出事業者は政令で定める委託基準に従う義務があります(廃棄物処理法第12条第6項)。委託基準の中身は施行令第6条の2にあり、その第4号が、委託契約は書面で行い、所定の事項の条項を含め、環境省令で定める書面を添付するよう定めています。条項の残りは施行規則第8条の4の2に、添付書面は同規則第8条の4に列挙されています(e-Gov法令検索、2026年9月15日確認)。
法律・政令・省令に散らばっている事項を1つの表に並べると、次のようになります。
| 契約書に書く事項 | 根拠条文 | 収集運搬の契約 | 処分の契約 |
|---|---|---|---|
| 委託する産業廃棄物の種類と数量 | 施行令第6条の2第4号イ | 必要 | 必要 |
| 運搬の最終目的地の所在地 | 同号ロ | 必要 | - |
| 処分(再生)の場所・方法・施設の処理能力 | 同号ハ | - | 必要 |
| 輸入された廃棄物であるときはその旨 | 同号ニ | - | 該当時 |
| 中間処理を委託するときの最終処分の場所・方法・処理能力 | 同号ホ | - | 該当時 |
| 委託契約の有効期間 | 施行規則第8条の4の2第1号 | 必要 | 必要 |
| 委託者が受託者に支払う料金 | 同条第2号 | 必要 | 必要 |
| 受託者が許可を受けている場合はその事業の範囲 | 同条第3号 | 必要 | 必要 |
| 積替保管を行う場合の場所・保管できる種類・保管上限 | 同条第4号 | 該当時 | - |
| 安定型産業廃棄物の場合、他の廃棄物と混合することの許否等 | 同条第5号 | 該当時 | - |
| 性状・荷姿など適正な処理に必要な情報 | 同条第6号 | 必要 | 必要 |
| 契約期間中に情報が変わったときの伝達方法 | 同条第7号 | 必要 | 必要 |
| 受託業務が終わったときの報告 | 同条第8号 | 必要 | 必要 |
| 契約を解除した場合の未処理の産業廃棄物の取扱い | 同条第9号 | 必要 | 必要 |
| 添付書面(許可証の写しなど) | 施行規則第8条の4 | 必要 | 必要 |
出典: e-Gov法令検索の施行令第6条の2・施行規則第8条の4・第8条の4の2(2026年9月15日確認)
「該当時」は、その条件にあてはまる場合だけ書く事項です。それ以外は、収集運搬・処分のどちらの契約でも欠かせません。環境省の「排出事業者責任に基づく措置に係るチェックリスト」(令和5年3月一部改訂)も、同じ事項を法定事項として並べ、許可証の写しを法定書類としています。
契約書の案を受け取ったら、この表を横に置いて1行ずつ照合してください。関係団体のひな形を使う場合も同じです。
委託契約は収集運搬と処分の業者と別々に結ぶ
廃棄物処理法第12条第5項は、運搬は産業廃棄物収集運搬業者などに、処分は産業廃棄物処分業者などに、それぞれ委託するよう定めています。施行令第6条の2第1号・第2号は、委託する運搬や処分が相手の事業の範囲に含まれることを条件に加えています。
ここから出てくるのが、排出事業者が収集運搬業者・処分業者のそれぞれと直接契約を結ぶ「二者契約」の原則です。環境省のチェックリストは、廃棄物引渡し前の確認項目として、収集運搬業者・処分業者それぞれと直接契約しているかを挙げています。宮城県・岡山県のページも、排出事業者と収集運搬業者、排出事業者と処分業者の二者間でそれぞれ契約を結ぶよう案内しています(いずれも2026年9月15日確認)。
収集運搬業者に処分先の手配まで任せ、契約は運搬業者と1通だけ、という形はこの原則から外れます。処分業者と契約を結ぶのは排出事業者自身です。
第三者に契約内容を決めさせない
環境省のチェックリストは、あっせん・仲介・代理といった形で排出事業者と処理業者の間に第三者が入る事例に触れ、委託する廃棄物の種類・数量、料金、有効期間といった契約の根幹は排出事業者と処理業者の間で決めるものだと説明しています。仲介料が発生し、適正な処理の費用が処理業者に届かなくなることが理由です。
処理業者は受けた仕事を他社に回せない
産業廃棄物収集運搬業者は運搬や処分を、産業廃棄物処分業者は処分を、それぞれ他人に委託できません(廃棄物処理法第14条第16項)。例外は、事業者から書面で承諾を受けるなど政令の基準に従う場合に限られます(施行令第6条の12)。
法定記載事項を条文の順に1つずつ確認する
表の事項を、契約書の条項を読むときの順に見ていきます。
種類と数量、運搬先、処分の場所と方法(施行令第6条の2第4号)
委託する産業廃棄物の種類と数量は、収集運搬・処分のどちらの契約にも書きます(同号イ)。種類は、委託先の許可証に書かれた事業の範囲と同じ区分で書くと、後述の許可証との照合がそのまま済みます。
収集運搬の契約には、運搬の最終目的地の所在地を書きます(同号ロ)。処分の契約には、処分(再生を含む)の場所の所在地、処分の方法、その施設の処理能力を書きます(同号ハ)。中間処理を委託する場合は、その先の最終処分の場所・方法・施設の処理能力も必要です(同号ホ)。自社の廃棄物が最後にどこへ行くかを、契約書の段階で押さえる仕組みです。輸入された廃棄物の処分を委託するときは、その旨を書きます(同号ニ)。
有効期間、料金、事業の範囲(施行規則第8条の4の2第1〜3号)
契約の有効期間(第1号)、委託者が受託者に支払う料金(第2号)、受託者が許可を受けている場合はその事業の範囲(第3号)の3つは、どちらの契約にも必要です。
料金は、金額を書くだけでなく水準にも注意が要ります。環境省のチェックリストは、地域の一般的な処理料金の半値程度かそれを下回る料金で委託していて、その合理性を示せない場合、適正な対価を負担していないことになると説明しています。この場合、委託基準に違反していなくても措置命令(廃棄物処理法第19条の6)の対象になる可能性があります。複数の処理業者から見積もりを取るなど、料金が適正かを把握する措置を講じていない場合も同じ扱いです。
積替保管を行う場合の事項(同条第4〜5号)
収集運搬業者が積替保管を行う場合、その場所の所在地、そこで保管できる産業廃棄物の種類、積替えのための保管上限を書きます(第4号)。委託する廃棄物が安定型産業廃棄物なら、その場所で他の廃棄物と混合してよいかどうかの取り決めも必要です(第5号)。積替保管の有無は、許可証の事業の範囲でも確認できます。
性状や荷姿など、処理に必要な情報(同条第6号)
委託者が持っている、適正な処理に必要な情報を契約書に書きます。産業廃棄物の性状と荷姿(イ)、通常の保管状況での腐敗や揮発といった性状の変化(ロ)、他の廃棄物と混ぜたときに生じる支障(ハ)、廃パーソナルコンピュータや廃ユニット形エアコンディショナーなど7品目に日本産業規格C0950の含有マークが付いている場合はその表示(ニ)、石綿含有産業廃棄物・水銀使用製品産業廃棄物・水銀含有ばいじん等が含まれる場合はその旨(ホ)、取り扱う際に注意すべきその他の事項(ト)です。
2026年1月1日からは、これに1項目が加わりました。委託者が化管法の第一種指定化学物質等取扱事業者で、委託する廃棄物に届出対象の第一種指定化学物質が含まれ、または付着している場合、その旨と物質の名称、量または割合を書きます(同号ヘ。令和7年4月22日の施行規則改正、環境省「有害廃棄物の情報伝達省令改正に関するFAQ」、2026年9月15日確認)。環境省のFAQは、この情報伝達が収集運搬の契約にも必要であること、契約書には「別途、WDSデータシートに基づく」と書いて廃棄物データシート(WDS)を添付する方法で差し支えないことを示しています。WDSの様式と記入の手引きは、環境省「廃棄物情報の提供に関するガイドライン」(第3版)で公開されています。
変更の伝達、終了報告、解除時の扱い(同条第7〜9号)
契約期間中に第6号の情報に変更があったときの伝達方法(第7号)、受託した業務が終わったときに受託者が委託者へ報告する方法(第8号)、契約を解除した場合に処理されずに残る産業廃棄物をどう扱うか(第9号)の3つです。性状の変化が処理業者へ伝わらない、解約後に廃棄物が処理業者の敷地に残る、といった事態を契約の段階で防ぐ条項です。
添付する書面(施行規則第8条の4)
契約書には、受託者が委託しようとする運搬や処分を業として行える者であることを証する書面を添付します。産業廃棄物処理業の許可証の写しがその代表で、環境大臣の再生利用認定などを受けた者に委託する場合は認定証の写しです。
契約を結ぶ前に委託先の許可証のどこを見るか
契約書に添付する許可証の写しは、委託先がその廃棄物を扱えるかを確かめる一次資料です。見る場所は3つあります。
許可番号と許可を出した自治体
許可番号は11桁で、1〜3桁目が許可を出した自治体、4桁目が業の種類、6〜11桁目が業者ごとに変わらない固有番号です。桁ごとの意味は許可番号11桁の読み方で整理しています。収集運搬の許可は、業を行う区域を管轄する都道府県知事が出すため(廃棄物処理法第14条第1項)、積む場所と降ろす場所の両方が許可の区域に入っているかを見ます。
手元の許可番号は許可番号チェッカーで自治体の名簿と照合できます。
事業の範囲(品目・処分方法・積替保管の有無)
環境省の許可番号等取扱要領(環循規発第2101291号)は、許可証を交付した自治体がシステムに登録する情報として、許可番号・許可年月日・有効期間の満了の日・許可の条件と、処分方法・積替え・保管の有無・産業廃棄物の種類・施設の住所などの許可明細情報を挙げています。施行規則第8条の4が許可証の写しを事業の範囲に含まれることを証する書面と位置づけているとおり、許可証で事業の範囲を読み取れます。
委託する廃棄物の種類がその範囲に入っていなければ、施行令第6条の2第1号・第2号の基準を満たしません。宮城県のページは、汚泥のみを事業の範囲とする収集運搬業者に廃プラスチック類の運搬を委託することはできない、という例を挙げています。品目だけでなく、処分の契約では処分方法(焼却・破砕・埋立など)も範囲に含まれているかを見ます。
有効期限
産業廃棄物処理業の許可には有効期間があり、更新を受けなければ期間の経過で効力を失います(廃棄物処理法第14条第2項・第7項)。期間は新規の許可で5年、更新時に優れた能力と実績があると認められた者は7年、それ以外の更新は5年です(施行令第6条の9)。7年の許可は、優良産廃処理業者認定制度の認定を受けた業者に出るものです。
契約の有効期間と許可の有効期限を並べて、契約期間中に許可が切れないかを見ておきます。
現地確認と処理状況の確認
排出事業者には、委託後も処理状況を確認し、最終処分が終わるまで適正に処理されるよう必要な措置を講じる努力義務があります(廃棄物処理法第12条第7項)。環境省のチェックリストは、処理施設の実地確認等を含めて適正処理を確保できることを確かめたうえで委託先を選ぶよう求め、法定事項ではないが重要な項目としています。
書面がない・記載が欠けた場合の罰則と行政処分
委託基準に反して産業廃棄物の処理を委託した者には、3年以下の拘禁刑もしくは300万円以下の罰金、またはその両方が定められています(廃棄物処理法第26条第1号)。書面がない、法定記載事項が欠けている、許可証の写しがないといった状態は、施行令第6条の2第4号の基準を満たしません。環境省のFAQは、2026年1月の追加事項についても、違反した場合は第26条の罰則が適用される可能性があると回答しています。
許可を持たない者に委託した場合は、さらに重い罰則です。第12条第5項に反して処理を委託した者は、5年以下の拘禁刑もしくは1,000万円以下の罰金、またはその両方の対象になります(同法第25条第1項第6号)。
法人の従業者が業務に関してこれらの違反行為をしたときは、行為者に加えて法人にも罰金刑が科されます(同法第32条第1項)。担当者個人の問題では終わりません。
罰則とは別に、行政処分もあります。委託基準に反する委託によって収集運搬や処分が行われ、生活環境の保全上の支障が生じるおそれがあるときは、都道府県知事はその委託をした者に対して支障の除去等の措置を命じることができます(同法第19条の5第1項第2号)。環境省のチェックリストも、委託の過程で不適正処理された場合には措置命令の対象になる可能性があると説明しています。委託しても排出事業者の処理責任は移らない、と同チェックリストが説明するとおりです。
契約書と添付書面は契約終了の日から5年間保存する
委託契約書と添付書面は、契約の終了の日から5年間保存します(施行令第6条の2第5号、施行規則第8条の4の3)。起点は契約を結んだ日ではなく、契約が終了した日です。宮城県の資料も、委託契約書と添付書類を契約終了日から5年間保管するよう明記しています。
処理業者から再委託の承諾を求められて承諾した場合、その承諾書面の写しも承諾した日から5年間保存します(施行令第6条の2第6号、施行規則第8条の4の4)。
契約書とは別に、廃棄物を引き渡すたびに交付する書類がマニフェスト(産業廃棄物管理票)です。返送された写しで運搬・処分の終了を確認します。交付の流れと控えの保存はマニフェスト(産業廃棄物管理票)の基本で整理しています。
よくある質問
収集運搬と処分を同じ業者に委託する場合、契約書は1通でよいですか。
その業者が収集運搬業と処分業の両方の許可を持ち、両方をその業者に委託するなら、契約の相手は1社です。岡山県は、収集運搬用・処分用と並べて「産業廃棄物収集運搬及び処分委託契約書」の参考例を公開しています(2026年9月15日確認)。1通にまとめる場合も、運搬の最終目的地(施行令第6条の2第4号ロ)と処分の場所・方法・処理能力(同号ハ)の両方の条項が必要で、添付する許可証の写しも収集運搬業と処分業の両方です。
建設工事の下請として出た廃材は、誰が委託契約を結びますか。
建設工事が数次の請負で行われる場合、その工事から生じる廃棄物の処理については、注文者から直接工事を請け負った元請業者が事業者とされます(廃棄物処理法第21条の3第1項)。委託契約を結ぶのは元請業者です。下請負人が自ら運搬や処分を他人に委託する場合は、その下請負人が事業者とみなされ、委託基準の適用を受けます(同条第4項)。
2026年1月に追加された記載事項は、今の契約をすぐ結び直す必要がありますか。
施行の時点で結ばれている契約には、契約更新までの間は改正前の規定が適用されます。環境省のFAQは、更新時に覚書を締結するなどの方法で情報を伝達するよう回答し、岡山県も施行日に再度契約を結び直す必要はないと案内しています。ただし、単価改定など法的拘束力のある覚書を結んだ場合は契約更新とみなされ、その時点から改正後の規定が適用されます(環境省FAQ 3-5)。
まとめ
産業廃棄物の処理委託契約は、収集運搬業者・処分業者のそれぞれと書面で結び、施行令第6条の2第4号と施行規則第8条の4の2が列挙する事項をすべて条項に含め、許可証の写しを添付します。契約前には許可証で許可番号・事業の範囲・有効期限を確かめ、契約書と添付書面は契約終了の日から5年間保存します。書面がない、記載が欠けているといった委託基準違反には3年以下の拘禁刑または300万円以下の罰金が定められ、措置命令の対象にもなります。
委託先候補の許可番号は許可番号チェッカーで自治体の名簿と照合できます。都道府県から探すときは、神奈川県・愛知県・埼玉県・佐賀県・北海道の各ページが使えます。
参考文献
- 廃棄物の処理及び清掃に関する法律(e-Gov法令検索)(2026-09-15確認)
- 廃棄物の処理及び清掃に関する法律施行令(e-Gov法令検索)(2026-09-15確認)
- 廃棄物の処理及び清掃に関する法律施行規則(e-Gov法令検索)(2026-09-15確認)
- 排出事業者責任に基づく措置に係るチェックリスト(環境省)(2026-09-15確認)
- 廃棄物情報の提供に関するガイドライン(環境省)(2026-09-15確認)
- 有害廃棄物の情報伝達省令改正に関するFAQ(環境省)(2026-09-15確認)
- 産業廃棄物処理業者及び特別管理産業廃棄物処理業者に係る許可番号等取扱要領について(環境省)(2026-09-15確認)
- 産業廃棄物処理委託契約(宮城県)(2026-09-15確認)
- 産業廃棄物の運搬、処分等の委託の基準(宮城県)(2026-09-15確認)
- 産業廃棄物処理委託契約書(電子マニフェスト対応)(岡山県)(2026-09-15確認)