建設廃棄物の処理排出事業者は元請業者になる理由

解体工事で出たコンクリート殻や木くずを、誰の名前で産廃業者に委託し、誰がマニフェストを交付するのか。下請として現場に入っていても、廃棄物の処理責任は元請業者にあります。廃棄物処理法第21条の3が、数次の請負でも元請業者を排出事業者と定めているためです。環境省の建設廃棄物処理指針と国土交通省の資料をもとに、元請と下請の責任分担、品目ごとの委託先、分別解体の届出を表にしました。読み終えると、自社の現場で何をいつ誰が行うかを確認できます。

建設工事の廃棄物はなぜ元請業者が排出事業者になるのか

廃棄物処理法第21条の3第1項は、建設工事が数次の請負で行われる場合、その工事で生じる廃棄物の処理について、発注者から直接工事を請け負った元請業者を事業者とすると定めています(2026年10月13日確認、e-Gov法令検索)。解体工事も建設工事に含まれます。

下請業者が実際に解体や掘削をして廃棄物を出しても、委託契約の締結、マニフェストの交付、処理の確認は元請業者の役目です。環境省の建設廃棄物処理指針は、元請業者が行う事項として、処理計画の作成、委託契約、マニフェストの交付、処理結果の発注者への報告、記録の保存などを挙げています(平成23年3月30日通知、2026年10月13日確認)。

責任の分担を、条文ごとに表にまとめました。

場面事業者として扱われる者根拠
廃棄物の処理の委託・マニフェスト交付元請業者法第21条の3第1項
産業廃棄物を下請負人が保管する場合下請負人も事業者とみなされ、保管基準を守る同条第2項
下請負人が自ら運搬する例外にあたる場合運搬について下請負人同条第3項
下請負人が運搬・処分を他人に委託する場合下請負人(産廃業者の許可を持つ下請負人が、元請から委託された運搬・処分を再委託する場合を除く)同条第4項

第4項には注意が要ります。下請負人が自分の判断で処理業者に委託すると、委託基準やマニフェストの規定が下請負人に適用されます。元請業者は、下請負人が勝手に再委託しない体制を契約で決めておくと安心です。

下請業者が自分で運搬できるのはどんな場合か

第21条の3第3項は、環境省令で定める廃棄物について、書面の請負契約で定めたうえで下請負人が自ら運搬する場合の特例を置いています。指針は、許可なく運搬できる条件を次のとおり示します。

  • 解体・新築・増築以外の維持修繕工事で、請負代金が500万円以下であること(引渡し後の瑕疵補修工事で相当額が500万円以下のものも対象)
  • 特別管理産業廃棄物ではないこと
  • 1回に運ぶ量が1立方メートル以下であること
  • 排出する事業場のある都道府県か隣接する都道府県にある、元請業者が所有または使用権原を持つ施設に運ぶこと

4条件のすべてに当てはまらなければ、この特例は使えません。解体工事は、請負金額が小さくても対象外です。特例を使う場合も、排出事業者は元請業者のため、マニフェストは元請業者が交付します。運搬を下請負人に任せることを、個別の請負契約か契約ごとの別紙で書面にしておく必要があります。

建設廃棄物の主な品目と委託先に求める許可の範囲

産業廃棄物の処理業の許可は、品目ごとの事業の範囲で与えられます。指針は、委託先がその廃棄物の処理を事業の範囲に含んでいることを確認するよう求めています。解体現場で出る主な品目を、指針の分類で整理しました。

品目解体・新築工事での例委託先に確認する点
がれき類コンクリート破片、アスファルト・コンクリート破片、れんが破片収集運搬業と処分業の許可の範囲に「がれき類」があること
木くず型枠、足場材、内装・建具工事の残材、抜根・伐採材、木造解体材範囲に「木くず」があること。建設業に係る木くずが対象
廃石膏ボード内装の石膏ボード安定型最終処分場に持ち込めない品目。処分先の許可の範囲を確認
建設混合廃棄物安定型とそれ以外が混在したもの選別設備のある中間処理施設や管理型最終処分場で処理される
廃石綿等飛散性アスベスト特別管理産業廃棄物。特別管理産業廃棄物の許可が必要

木製品、ガラス製品、プラスチック製品の廃材は、工作物の除去に伴って出ても「がれき類」には含まれません。コンクリート殻とボード類を混ぜて出すと、処分先と費用が変わるため、現場での分別が費用を左右します。がれき類の範囲はがれき類とコンクリートくずの違いと処分でも確認できます。木造解体材や型枠などの扱いは木くずの処分方法|産廃になる場合と持ち込みにまとめています。

産業廃棄物の許可の有無と事業の範囲は、許可証で確認できます。埼玉県内の業者は埼玉県の産業廃棄物処理業者から探せます。許可証の見方は産業廃棄物の委託契約書|必ず書く法定記載事項の許可証の節にも整理しています。

建設リサイクル法の分別解体と届出は誰が行うか

建設リサイクル法の対象になるのは、コンクリート、コンクリートと鉄から成る建設資材、木材、アスファルト・コンクリートの特定建設資材を使った構造物で、次の規模以上の工事です(国土交通省の周知資料、2026年10月13日確認)。

工事の種類規模の基準
建築物の解体工事床面積の合計80平方メートル以上
建築物の新築・増築工事床面積の合計500平方メートル以上
建築物の修繕・模様替等工事請負代金1億円以上
建築物以外の工作物の工事請負代金500万円以上

届出をするのは発注者または自主施工者で、工事に着手する7日前までに都道府県知事へ行います。受注者は、発注者に分別解体等の計画を書面で説明し、契約書面に分別解体等を明記し、再資源化が終わったら書面で報告します。この法律の分別解体と、廃棄物処理法の排出事業者責任は別の制度です。両方の義務が同じ現場に重なります。

委託契約書とマニフェストの実務は何を元請業者が行うか

建設廃棄物を委託するとき、元請業者は収集運搬業者と処分業者のそれぞれと、事前に書面で契約を結びます。契約書には、廃棄物の種類と数量、処理業者の事業の範囲、処分場所、料金、契約期間などを記載し、業者の許可証の写しを添付します。記載事項の詳細は産業廃棄物の委託契約書で条文ごとに整理しています。

マニフェストは、引き渡し時に元請業者が交付します。保管の基準は産業廃棄物の保管基準に沿って、現場ごとに掲示板や囲いを整えます。

指針は、処理の委託を終えた後の記録についても数字で示しています。

  • 委託契約書、処理実績は工事完了後5年間保存する
  • マニフェストの写しは5年間保存する
  • 交付から90日以内(特別管理産業廃棄物は60日以内)に処理終了の票が戻らないとき、状況を確認して措置を取る

よくある質問

下請業者に「産廃も運んでおいて」と任せてもよいですか。

許可を持たない下請業者に運搬を任せられるのは、500万円以下の維持修繕工事で1立方メートル以下などの条件を満たし、書面の請負契約で定めた場合に限ります。解体工事は対象外のため、産業廃棄物収集運搬業の許可を持つ業者に委託し、元請業者がマニフェストを交付します。

下請が処理業者の許可を持っていれば、その業者に出してよいですか。

下請業者が産業廃棄物の収集運搬業や処分業の許可を持つ場合は、元請業者から委託を受けた廃棄物の運搬・処分を行えます(法第21条の3第4項のかっこ書き)。この場合も、元請業者との間で書面の委託契約を結び、事業の範囲に当該品目が含まれることを確認します。

まとめ

建設工事の廃棄物は、数次の請負でも元請業者が排出事業者です(法第21条の3第1項)。下請業者が許可なく運べるのは、500万円以下の維持修繕工事などの限られた場合だけで、解体工事には使えません。現場では、品目を分別し、事業の範囲にその品目を含む許可業者と書面で契約し、マニフェストを交付して5年間保存します。委託先の許可の範囲は、埼玉県の産業廃棄物処理業者の一覧や、許可証の写しで確認してください。契約書の記載事項は委託契約書の法定記載事項にあります。

参考文献